-最新の放射線治療「重粒子線と陽子線」-


最新の放射線治療「重粒子線と陽子線」

副作が少なく治療効果が高い重粒子線と陽子線治療

手術による切除、抗がん剤の投与と並んで、がん治療三本柱の一角を担うのが放射線照射です。病巣に放 射線が当たると、がんは細胞分裂ができなくなり、死んでいくのが治療のメカニズムです。

しかし、放射線は正常細胞にも悪影響を与えます。通常のエックス線を使った放射線治療では、体の表面 から体内の病巣部に近づくに従って放射線の量が弱まっていきます。がん細胞への効果は薄れ、病巣の前後 の正常な組織も傷つける副作用を起こします。

そこで、病巣だけに、しかも強力な放射線照射を実現したのが、放射線の1種の重粒子線(炭素イオン線 )と陽子線治療です。


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主な特徴は2つあります。

  1. 通常の放射線治療に使われるエックス線、ガンマ線に比べて粒子が大きく、がん細胞への殺傷力が強 い 。
  2. 弱い力で体内に入り、正常細胞への影響を抑えながら、病巣に達したところで力が最大になるように 調 節できる。また、病巣でピタリと攻撃をやめて、その先にある正常細胞への影響を抑えられる。神経や消 化 管が隣接していても影響は少ない。

重粒子線は骨肉腫のような骨や筋肉など、治療の難しいがんにも効果が高いです。「がんの種類によって は手術による切除にまったく劣らない」と放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院長の辻井博彦さ んは断言します。

一方の陽子線の効果も同様です。1998年に副鼻腔(ふくびくう)がんが見つかった千葉県の女性(5 2)は手術を受けましたが、99年に再発しました。今度はがんが左の眼球に接しているため、外科手術では 眼球も一緒に摘出せざるを得ませんでした。また、通常の放射線治療でも強いエックス線が目を通過するた め失明の恐れが高くなります。第三の方法として、国立がんセンター東病院で放射線の一種の陽子線治療を 受け、視力を犠牲にせずに完治させることができました。

陽子線治療部長の荻野尚さんは「副鼻腔がんや咽頭(いんとう)がんなど、手術や通常の放射線治療では 視力や声を失わざるを得ない場合でも、機能が残せる可能性がある」と言います。陽子線治療を始めた98 年からこれまでの患者180人のうち、4割が頭頸部(とうけいぶ)のがんでした。

早期の肺がん、肝がん、前立腺がんでも手術と変わらない成績だと言います。これらのがんでは、手術が 第一の選択肢とされますが、肺気腫(はいきしゅ)などで呼吸機能が低下して手術が危険な肺がん患者や、 手術を受けたくないという患者さんを対象に治療をしてきました。

荻野さんは「進行して手術ができない場合、陽子線でも治療は難しいです。早期がんでは合併症の少ない 治療法として有力な選択肢の一つとなります。」と説明しています。

重粒子線と陽子線の施設と費用

ただし、施設整備には巨額の費用がかかるのが、重粒子線や陽子線治療の問題です。

放射線の粒子が大きい重粒子線は、照射時に十分に加速しなければ、体内の病巣を的確にとらえられませ ん。このため、直径約40メートルものドーナツ状の加速器で、3段ロケットのように加速し、光速の8割 近い超スピードに上げます。放射線医学総合研究所の施設は、奥行き120メートルという大型のものです 。文部科学省が統括し、加速器だけで総工費325億円をかけました。世界に炭素イオン線施設は、このほ か兵庫県新宮町の兵庫県立粒子線医療センターとドイツの2か所しかありません。

陽子線も大型の施設が必要で、国立がんセンター東病院では建物も含めた費用は80億円。維持費だけで も年4-5億円がかかります。このため陽子線治療施設は、全国に5か所しかありません。

陽子線の場合、治療は外来で受けることができますが、同病院では治療費として280万円の自己負担が 必要になります。一方、重粒子線も含め、研究として実施している施設では、治療対象を絞った上、無料で 行っています。将来は、研究施設でも、一定の費用負担が必要になってくる見込みです。

関連医療機関 重粒子線

放射線医学総合研究所(千葉県)

兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県)

関連医療機関 陽子線

国立がんセンター東病院(千葉県)

兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県)

筑波大陽子線医学利用研究センター (茨城県)

若狭湾エネルギー研究センター (福井県)

静岡がんセンター (静岡県)


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