-放射性ヨウ素による小児甲状腺がんの治療および予防-


放射性ヨウ素による小児甲状腺がんの治療および予防

甲状腺がんの特長

甲状腺は、首の喉仏(のどぼとけ)のすぐ下にあり、蝶が羽を広げたような形で気管にくっついています。昆布などに含まれるヨウ素を取り込んで、甲状腺ホルモンやカルシトニンなどのホルモンを作ります。呼吸や飲食物から放射性ヨウ素が入ると、10~30%の放射性ヨウ素が甲状腺にたまり、残りは尿から排出されます。


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原発事故と小児甲状腺がん

1986年のチェルノブイリ原発事故では、牛乳などが放射性ヨウ素に汚染され、事故の5年後から甲状腺がんになる子どもが増えました。国連のまとめでは、事故当時18歳未満だった6848人が1991年~2005年の15年間に甲状腺がんを発症しました。このほかのがんは、今のところ、周辺住民での明らかな増加は認められていないとしています。

長崎大医歯薬学総合研究科長の山下俊一さんによりますと、周辺地域での子どもの甲状腺がんの年間発症率は、もともと100万人に1人程度でしたが、事故後、地域によっては一時期1万人に1人くらいまで増加しました。しかし甲状腺がんは、治癒率が高く、2005年までに甲状腺がんで亡くなった人は15人だったといいます。

チェルノブイリ原発事故の影響は、専門家の間でも意見が分かれています。しかし様々な角度から調査、研究に当たった京都大原子炉実験所助教の今中哲二さんも「実際の死者数は、もう少し多い可能性はありますが、小児甲状腺がんの発症についてはこの程度です」と話しています。

大人の甲状腺がんは明らかな増加が認められず、はっきりした影響はわかっていません。しかし当時子どもだった人の間では、成人になった今も甲状腺がんの発症が続いています。

被曝量と甲状腺がんの発症率

周辺住民の被曝量の推定が難しいため、どの程度の量でがんが起きるのかもはっきりしていません。山下さんによりますと、甲状腺がんを発症した子どもの放射性ヨウ素の甲状腺被曝量は推定50~100ミリシーベルトくらいから2000ミリシーベルトの間で、被曝が多いほどがんになる率は高かいです。

福島第一原発事故後、国は水や食品の放射性ヨウ素の基準値を設け、出荷や摂取制限をしています。野菜(根菜、芋類を除く)は1キログラムあたり2000ベクレル、乳児については水や牛乳が1キログラムあたり100ベクレル。

原子力安全委員会の指標に基づいて計算しますと、100ベクレルの水を乳児が1リットル飲むと0.37ミリシーベルト、2000ベクレルの野菜を幼児(5歳)が200グラム食べると0.84ミリシーベルト、甲状腺に被曝します。50ミリシーベルトに比べても極めて低いです。「数回誤って食べた程度では大丈夫」とされたのはこのためです。

甲状腺がんの治療法

がん研有明病院(東京都江東区)頭頸科副部長の杉谷巌さんによりますと、放射線の影響で起きやすいのは甲状腺がんの中の「乳頭がん」というタイプで、甲状腺がんの約90%を占めています。乳頭がんの80~90%は生命にかかわることがない低危険度のもので、手術で99%以上治ります。

乳頭がんの初期では、首ののどぼとけの下あたりや他の部分にかたくて痛みのないしこりがあらわれます。乳頭がんは、しこり以外の自覚症状はあまりありません。

乳頭がんの進行スピードは、とてもゆっくりと進行します。転移することも少ないのですが、肺などに転移した場合は、手術で甲状腺を全部摘出した後に、放射性ヨウ素を服用します。放射性ヨウ素は転移した甲状腺がん細胞だけに取り込まれ、ここから出る放射線が今度はがん細胞を攻撃し、死滅させます。これを「小線源治療(しょうせんげんちりょう)」といいます。

杉谷さんは「甲状腺乳頭がんの大部分は治りやすいがんですが、がんの大きさや広がり方で治療が違いますので、事前の見極めが重要になります」と話しています。

甲状腺がんの予防

安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)を予防的に内服して甲状腺内を安定ヨウ素剤で満たし、以後のヨウ素の取り込みを阻害します。

安定ヨウ素剤は、摂取ガイドラインに沿って摂取することで24時間甲状腺を保護し、後から取り込まれた「過剰な」ヨウ素は速やかに尿中に排出します。

また、放射性ヨウ素の吸入後であっても、8時間以内であれば約40%、24時間以内であれば7%程度の取り込み阻害効果が認められると言われています。この薬は副作用は少ないと言われていますが、ヨウ素への過敏症や、甲状腺機能異常が副作用としてあります。

このため妊娠中の方、または授乳中の女性と乳児は安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)を繰り返し摂取することを避け、公的機関もしくは医療機関の指示に従って摂取してください。

また安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム) をガイドラインで定められた量を超えて摂取すると、健康を害する可能性があります。用法・容量を正しく守り、自己判断で多量を服用する等の行為は絶対に避けてください

関係医療機関

がん研有明病院(東京都江東区)


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