-E型肝炎ウイルス(HEV)の検査と予防法-


E型肝炎ウイルス(HEV)の検査と予防法

E型肝炎ウイルス(HEV)の検査

食べ物を通して感染し、急性肝炎を起こすのがE型肝炎ウイルスです。国内で感染が続いていて、重い症状になり亡くなる人もいます。これまでは厚生労働省の承認を受けた検査薬がないため実態がよくわからず、適切に治療するための診断にも支障がありました。2010年、医療関係機関向けの検査薬がようやく承認され、治療や実態把握に貢献すると期待されています。

2010年6月、北海道の病院に50代の女性が急性肝炎の疑いで入院しました。38度台の熱があり、最初にかかった診療所で採血して肝機能の異常が見つかりました。翌日にはさらに悪化して「重症型」と診断され、肝臓の炎症を抑えるために、ステロイド剤や免疫抑制剤を使った治療が行われました。入院はーカ月に及びました。

入院当初は、原因がわかりませんでした。B型肝炎やC型肝炎でないことは、検査ですぐにわかりました。担当医師はE型肝炎を疑いました。しかし、このときは病院で使える厚労省承認済みのE型肝炎検査薬が、有りませんでした。厚労省研究班で研究レベルの検査をしている、東芝病院(東京)に依頼して調べてもらい、しばらくしてE型肝炎ウイルス(HEV)に感染していたことが判明しました。

HEVは食べ物を通して感染しますが、潜伏期間が約6週間と長いため、感染経路の解明は難しいです。この女性の場合も、どこで感染したかは、はっきりしなかったといいます。

担当医師は「結果的にE型肝炎と判明しても炎症を抑える治療法が変わるわけではありませんが、原因がはっきりしないと医師としては不安があります。患者さんや家族にとっても病名がわからないのはストレスになります」と語っています。

こうした事情から、専門家はE型肝炎検査薬の承認を待ち望んでいました。2010年7月に厚労省が製造承認し、11月から臨床検査機関や病院など向けに発売されました。

E型肝炎の治療経験が豊富な手稲渓仁会病院(ていねけいじんかいびょういん 札幌市)の姜貞憲(カンジョンホン)・主任医長(消化器内科)は、「E型肝炎検査薬で正しい診断ができる意義は大きいです。たとえぱ、薬剤性肝炎や自己免疫性肝炎との区別をつけられます」といいます。

姜さんによりますと、急性肝炎は自然に良くなる場合がほとんどです。「だが一部の重症化する患者を早めに区別することが大切」といいます。


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E型肝炎ウイルス(HEV)による死亡例

北海道では09年4月、HEVで劇症肝炎(脳症などを起こす重い肝炎)になった60代男性1人が亡くなっています。黄疸(おうだん)などの症状が出て、入院治療を受けていました。厚労省は死亡を受けて、2010年6月に都道府県などに注意を喚起しています。

東芝病院研究部の三代俊治部長によりますと、2010年6月の重症患者や09年の死亡患者からみつかったHEVを遺伝子解析した結果、2004年や06年に北海道で劇症肝炎を起こしたウイルス株ときわめて近縁のものでした。「重症の肝炎を起こすウイルス株がどこかで生き残っていると考えられます。重症をこれ以上増やさない対策が必要です」といいます。

E型肝炎ウイルス(HEV)の国内感染経路

感染が杜会的問題になり注目されてきたB型肝炎やC型肝炎に比べて、E型肝炎は日本ではあまり知られていない病気です。アジア・アフリカの衛生環境が整っていない地域で、飲料水の汚染などが原因で数万人規模の大流行を起こして注目されてきました。

日本では海外から帰国した人に起きる、輸入感染症と考えられてきました。しかし、この10年ほどで研究が進み、国内にいる動物にもウイルスが定着していて、その動物の肉や内臓などを十分加熱しないで食べることで人に感染する人獣共通感染症としての実態が明らかになってきました。感染経路として指摘されている動物は豚、イノシシ、鹿です。

03年に兵庫県で鹿肉を生で食べた4人が、E型肝炎を起こしたと報告されています。04年に北海道で起きた集団感染では、加熱不十分な豚レバーを食べた可能性が指摘されています。

東芝病院の三代部長らの調査では、東京都内のスーパーと肉屋22店舗で非加熱国産豚レバーを購入し、計260個のレバーのうち7個(2・7%)からHEVを検出しました。

感染症法にもとづくE型肝炎の報告数は、このところ年間50人前後で推移しています。しかし、実態ははるかに多いとされています。これまでは承認を受けたE型肝炎検査薬がなかったため、一般の病院で、検査ができず一部の大学や研究機関で検査が進められてきた事情があるためです。

検査薬が承認されたことで、今後、実態把握が前進しそうです。

自治医科大学の岡本宏明教授(ウイルス学)は、国内での急肝炎の発生状況などをもとにE型肝炎の患者は「少なくとも年間約600人」と推計されます。さらに、感染しても発症しない不顕性感染が多く、感染者数は「年間12万~18万人」と推定されます。

国内で判明しているE型の劇症肝炎は09年までに14人で、うち11人(79%)が死亡しているといいます。

E型肝炎ウイルス(HEV)の予防法

感染の予防法としては、豚やイノシシ、鹿の肉やレバーなどを食べる時に、十分に中心まで加熱することなどが重要になります、岡本教授らの実験によりますと、70度で10分間加熱するとHEVは感染力を失いました。56度で30分の加熱では、感染性が残っていました。

岡本教授は「感染経路はまだわからないことが多いです。さらなる解明が必要になります」と語っています。

ウイルス性肝炎の種類

ウイルス性肝炎には、A~E型の5種類あります。B、C、D型は主に血液で感染し、慢性肝炎になって肝硬変や肝がんを起こすことがあります。注射器の使い回しや輸血、血液製剤などが原因です。B型は出生時の母子感染が多かったです。いずれも対策が進み、激減しました。

D型はB型とともに感染し日本は少ないです。A、E型は食べ物や飲料水などから感染、慢性化せずに急性肝炎を起こします。まれに劇症肝炎になり死亡します。衛生環境の悪い地域で流行を起こすが、日本など先進国は少ないです。

関連医療機関

東芝病院(東京)

手稲渓仁会病院

自治医科大学


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